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意見表明

2025.03.05

日本学術会議の独立性・自律性を奪う「法人化」に反対する

日本学術会議(以下「学術会議」と略称)について、2023年8月に内閣府特命担当大臣の下に設置され審議してきた「有識者懇談会」は、2024年12月20日に「最終報告」を発表し、これを受けて政府は、2025年の国会にさいして、学術会議「法人化」の法制化作業を進める方針を発表した。
そもそも学術会議をめぐる問題の発端は2020年、当時の菅義偉首相が、6名の学術会議会員の任命を拒否したことにある。学術会議の組織形態の変更は、この本来の問題をすり替えるものだ。学術会議の「独立性」を確保するためと称する今回の「法人化」は、そもそも不要であり、「任命拒否」の現状を糊塗しようとするものでしかない。
今回の「法人化」方針そのものの問題は、「監事」「選考助言委員会」「評価委員会」等に外部委員が入り、会員の選考、「中期的な活動の方針」策定における助言などをつうじて、学術会議の運営にたいする外部からの介入が可能になることにある。「最終報告」では「国民が納得」「国民に説明できる」「国民との約束」などの言葉により、これらの制度変更が正当化されている。他方で、「最終報告」における「使命・目的等」の中には、「近年、いわゆる『政策のための科学(science for policy)』が強く求められるようになっていることも世界的な潮流」であり、「学術の向上発達及び学術の成果を行政、産業及び国民に還元し社会の課題を解決」するといった文言も見られる。これらの文言を足掛かりに、政府・財界による学術会議への介入・統制が進められるといった懸念は払しょくし難い。この方向での「法人化」は学術会議の独立性・自律性を侵害しかねない。
私たち唯物論研究協会は、戦前1932年に戸坂潤らが設立した唯物論研究会が治安維持法による弾圧を受けた苦い歴史から学んできた。時の権力が「学問の自由」に介入を始めるとき、その時代と社会がどこに向かうのかを私たちは熟知している。このことから 1978 年の創設以来、私たちは自由と民主主義の発展を願って学術研究を進め、その活動の根幹に、日本国憲法第23条に定められた「学問の自由」を置いてきた。そして日本学術会議もまた、「学問の自由」を守るための機関として重要な役割を果たしてきた。
私たちは、2020年以来の学術会議会員6名の任命拒否を石破茂首相がすみやかに撤回することを改めて求めるとともに、学術会議の性格を根幹から揺るがしかねない今回の法人化に強く反対する。

2025年3月1日 唯物論研究協会(全国唯研)委員会

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