2007.05.19
唯物論研究協会委員会
去る5月14日、政府与党は改憲を目的とする国民投票法案を参議院本会議において強行採決、成立させた。同法案の審議過程では、最低限投票率の規定がないことなど数多くの不備が指摘され、改憲を容易にする手続き法であるとの疑義が寄せられてきた。それにもかかわらず、安倍政権は、拙速な審議の末に強行成立させた同法をステップに憲法審査会を設置し、改憲案のなし崩し的作成作業を開始しようとしている。
改憲を前提としたこれらの手続きは、憲法改正という、日本社会の成員に徹底して開かれた議論を保障すべき最重要の課題にかんする公正で民主主義的な検討を制約し、改憲の実現へと誘導するものである。とりわけ我々にとって座視できないのは、国民投票法が「学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない」として、教員による言論活動、改憲反対運動を禁ずる内容をもっていることである。同法附帯決議は、「意見表明の自由、学問の自由、教育の自由等を侵害することとならないよう」「慎重な運用を図る」としているが、学問の自由、言論の自由がどんな場合に禁止され許容されるかを政府当局者の「運用」によって左右すること自体が、これらの自由に対する重大な侵害と言わねばならない。こうした制限をあらかじめ加えることで改憲を容易にする手続きは、それ自体、現憲法に明示された学問の自由、言論の自由をあらかじめ破壊する暴挙に他ならない。
学問・教育・言論の自由を擁護することに深い関心を寄せ、また責務を持つ我々は、これらの自由を侵害する国民投票法の強行成立に抗議するとともに、自由で公正な議論を封じる改憲手続きの強行に対し強く反対するものである。また、今後、この問題についての教員を含む全国民の自由な意見表明を禁ずる不当な制限を加えることなく、十分な国民的議論を保証すべきことを強く訴えるものである。
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