研 究 大 会

第3分科会「現代における人文社会科学の危機」

 報告者:鈴木宗徳 氏(南山大学)
     竹内真澄 氏(桃山学院大学)

 報告は大会プログラム・レジュメに載ったものをさらに充実させて配布ペーパーに基づいて行われた。

 竹内真澄氏は、チョムスキーらの書『冷戦と大学』の内容を基に自己の見解を交えて以下のように報告。アメリカの社会科学研究の特徴を時代的には19-20世紀、地域的には西洋と非西洋、分野としては政治学、経済学、社会学に基礎が作られたと捉え、それがさまざまな再分化と分断生んだと捉えるとともに、地域研究にとって決定的な分断となったのが、非西洋研究が人類学とオリエンタルスタディズに担われた点であったと見る。これらが戦後は、ヨーロッパを(失敗、崩壊として)無視する傲慢なアメリカとなって反共主義と結合し、ソ連・中国研究が台頭、地域研究の革新、「普遍的包括的な社会と人間行動の科学」が提唱された。こうして冷戦と世界支配のための研究が行われたが、60年代以降、抵抗がなされ限界を超える努力がおこなわれて世界システム論の前提となる新しい動き、および、黒人、エスニック、女性、労働史研究が登場し、さらには政府批判の安全性が生まれ、さらに、社会史、アメリカ史の書き換えが進行し、コンピューター化の下で企業依存傾向が進行していると見る。さらに、アメリカ型社会科学の日本への影響は 相対的に親米派が少ないことと日米社会科学の協力体制が弱い(韓国ではアメリカ一辺倒)ことが特徴と見ている。

 鈴木宗徳氏は竹内氏が触れた1968年の社会学の「方法論争」に関わる形で、「アドルノ+ハーバーマス」対「ポッパー+アルバート」の実証主義論争をハーバーマスとマルクーゼの主張を通して紹介、テクノクラシー批判としての科学技術批判、科学技術批判としての実証主義批判と意義付け、ウェーバーを評価する観点も示しつつ、自然科学批判のみならず人文社会科学の批判の必要性を結論とした。

 質疑応答は、ハーバーマス評価をめぐる点、アメリカ社会科学をめぐる点および日本の社会科学をめぐる点に分かれたが、ハーバーマスの問題点、アメリカの研究体制の力強さ、日本の科学と文学という文脈や哲学における民衆との接点などの論点がしめされ、さらに韓国の社会科学の状況も紹介された。「国立大学解体」へ進む現状の問題解明につながる点もあったと思う。

(文責:加藤 恒男)

戻る