唯物論研究協会の意見表明

共謀罪処罰を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」の撤回、廃案を要求する

2017年5月20日 唯物論研究協会(全国唯研)委員会

 現在、政府が国会に提出している「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」は、多くの市民・法律家の指摘や、この間の国会審議を通して明らかになってきたように、公権力による諸団体や諸個人の監視を強め、「思想及び良心の自由」をはじめとする個人の自由の侵害につながるものである。すなわち、既遂行為の処罰という刑法の原則を覆し、「組織的犯罪集団」とその犯罪「実行準備行為」を処罰の対象とするということは、公権力が市民の活動を監視下におき、個人の思想・信条に踏み込み、その自由な活動を委縮させることにつながるものである。これは、日本国憲法の保障する「思想及び良心の自由」、「信教の自由」、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」、「学問の自由」等を侵害する危険性をもつものであり、とうてい容認できない。思想信条の自由・学問の自由を基盤とし、「唯物論の研究および現代の社会と文化に関する批判的研究の発展と交流を目的とする」私たち唯物論研究協会は、衆院法務委員会での採決強行に抗議し、この法案の撤回、廃案を強く要求するものである。

 私たち唯物論研究協会は、戦前の唯物論研究会が「治安維持法」のもとに学術研究を弾圧され、また会の優れたリーダーであった戸坂潤や、会の研究活動に多大な影響を与えた哲学者三木清が獄死させられた苦い歴史を胸に刻んでいる。私たちは学術研究の自由にたいする弾圧と、アジアと日本で数百万の犠牲者を出した侵略戦争とがともに、当時の日本を支配した軍事政権の戦争政策のもたらした惨禍であったという教訓に思いをいたし、政府や国会にたいして、この危険な法案を撤回、廃案にすることを強く求めるものである。


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