唯物論研究協会の意見表明

海外で戦争に関与する道を開く安保法制の撤回、廃案を要求する

2015年6月8日 唯物論研究協会(全国唯研)委員会

 現在、自民・公明連立権が国会に提出している多国籍軍後方支援の恒久法案、武力攻撃事態改正法案、周辺事態改正法案、国連平和維持活動改正法案など10の改訂法案は、以下の理由により日本国憲法の平和主義や国民主権の原則を破壊し、また国民の生命を危険にさらすものであり、とうてい容認できない。私たち唯物論研究協会はそれらの撤回、廃案を要求する。

 第一に、これら法案の閣議決定や国会提出は第九条をはじめとした日本国憲法の定める平和原則を否定するものであり、立憲主義に基づく法治国家の原則とは相容れない。こうした態度は、民主主義や国民主権をなし崩しに風化させ、独裁体制や戦争国家を再来させる恐れがある。

 第二に、安倍首相はこれらの法案を日本の国会に諮って国民的に議論する以前に法案の成立を米議会で宣言・公約するなどして日本国憲法の根幹である国民主権、議会制民主主義をないがしろにし、日本が主権国家であることさえ無視するような態度をとっている。それは反民主主義的であるばかりか、国を売り渡すことにさえ等しい。このような首相の態度が許容されれば、日本はますますアメリカの従属国として認知され、基地撤去を要求する沖縄県民をはじめとして、米軍基地によってもたらされている国民の被害と苦痛は放置され、いっそう深刻化するであろう。

 第三に、法案自体が現行の自衛隊の海外での活動制限を緩和し、とくに、いつでもどの地域でも米軍のために武器行使を含む活動を行うことが可能になってくる。このことは日本が戦後長いあいだ憲法の平和原則のもとで築いてきた国際的信頼を著しく傷つけ、ひいては国民が国内外でテロリズムの標的となるとともに、海外で活動に参加する自衛隊員の生命をいっそう危険にさらすことになる。

 私たち唯物論研究協会は、戦前の唯物論研究会が戦前の治安維持法のもとに学術研究を弾圧され、また会の優れたリーダーであった戸坂潤や、会の研究活動に多大な影響を与えた哲学者三木清が獄死させられた苦い歴史を胸に刻んでいる。私たちは学術研究の自由にたいする弾圧と、アジアと日本で数百万の犠牲者を出した侵略戦争とがともに、当時の日本を支配した軍事政権の戦争政策のもたらした惨禍であったという教訓に思いをいたし、政府や国会にたいして、憲法を無視したこれらの危険な法案を廃案にすることを強く求める。

 最後に、現政権によるメディア統制や大学などでの不当な言論抑制策が陰に陽に進められている現在、私たち自身が、多くの国民に法案の不当性を訴えるとともに、軍事力に依拠しない平和な国際関係のための学術討論を積極的に組織することを表明する。


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