唯物論研究協会の意見表明

ハンガリーにおける研究者迫害と表現の自由の侵害に関する声明

2011年5月14日 唯物論研究協会委員会

私たち唯物論研究協会は、唯物論の研究および現代社会と文化に関する批判的研究の発展と交流を目的とする日本の学術団体です。私たちは、ハンガリーで現在起こっている研究者に対する迫害と表現の自由の侵害について大変な危惧を抱いています。

伝えられるところでは、昨年の政権交代以降、ハンガリー科学アカデミーの哲学部門の長が解任され、さらに23名のメンバーが「専門家として不適切」との判定を受けたとされています。政治によるこのような研究活動への介入は、きわめて憂慮すべき事態です。さらに、ヘラー教授、ヴァイダ教授、ラドノーティ教授など、ハンガリーの著名な哲学者たちが、研究資金の不正使用の嫌疑で告発されています。もちろん、重大な違法行為がある場合にはいかなる市民も訴追を免れるべきではありません。しかし、その告発や捜査は政治的な意図によってゆがめられてはならず、ましてや伝えられているようなメディアによる彼女たちへの攻撃は、人権侵害にあたり、とくにそこに反ユダヤ主義的な論調もみられることを、私たちは決して看過することができません。私たちは、専門家による自由な研究活動が保証され、上記の疑惑についての捜査および裁判が、政治的意図や人種的な偏見によってゆがめられることなく、法と民主的な手続きに則って、公正に行われることを求めます。

さらに、昨年12月に成立したハンガリーのメディア法は、最近行われた改正にもかかわらず、依然として審査の公平性が十分に保たれているとはいえず、権力によるメディアコントロールの危惧を払拭するものとはいえません。

市民の言論活動と研究者の研究活動は政治的な干渉から自由でなければならないという民主主義の原則から、私たちは以上のようなハンガリーの状況を憂慮するものです。私たちは、こうした研究への恣意的な政治介入と特定の研究者や研究機関への干渉が一刻も早く止むことを期待し、そのための措置が取られることを要求します。

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