唯物論研究協会の意見表明

東京都立四大学及び横浜市立大学への不当な「大学改革」攻撃に抗議する

2004年4月7日 唯物論研究協会委員会

 石原東京都知事、中田横浜市長は、この間、東京都立四大学、横浜市立大学にたいしそれぞれ大学改革に名を借りた不当かつ恣意的な介入を行い、大学の自治と教育研究の自律性を根底から破壊する暴挙を繰り広げている。東京都立四大学について、東京都・大学管理本部は、石原都知事の意向を受けて昨年八月、大学とともに作成した改革案を一方的に破棄し、大学の意思を一切排除した「改革」作業を強行してきた。また、この方針に従うことを「意思確認書」なる恣意的「踏み絵」によって教員に強要するという、なりふりかまわぬ教員攻撃を加えている。横浜市でもまた、中田市長の意向により、大学改革推進本部の指導下、学内世論を無視した改革案を密室審議によって大学に作成させ、教員人事権の自主性や教育研究組織の自律性を徹底して弱体化し、全教員への任期制導入など、教育研究に携わる教員の無力化を図っている。明年四月一日からの独立行政法人化移行を掲げた両大学の「改革」は、行政権力の介入によって変質し、大学としての資格も精神も失った「行政管理大学」の悪しきモデルとなろう。
 見逃すことができないのは、両大学への行政介入が、時の権力が望むかたちに「知」を再編しようとしていること、権力による知性の改変を公然とすすめていることである。石原都政が望む産業利益に教育研究組織が奉仕すること、「プラクティカルなリベラルアーツ」という、意味不明な標語の下に押しつけられる横浜市に役立つ「実学」しか認めないこと、いずれも、学問のあり方や知の歴史的蓄積にかんする洞察も配慮も欠いた、浅薄で近視眼的な知識像にほかならない。このような実利主義的大学像に立つ「改革」が強行されるとき、大学と学問が何よりも守らねばならない知性と批判的精神とは壊死に見舞われる。広く学問と知性のあり方に関心を寄せ、また責任を負っているすべての人間にとって、これは座視できる事態ではない。
 唯物論研究協会は、現代世界の知的・批判的究明をめざす学会として、現在すすめられている東京都立大学、横浜市立大学への行政介入に断固抗議し、学問の自由と大学自治への侵犯をただちに中止するよう、東京都・大学管理本部、横浜市・大学改革推進本部に強く要求するものである。

戻る